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【ナルトで学ぶ政治】二代目火影・扉間の政治手腕と失敗をやさしく解説

アニメ・漫画

ナルトのネタバレを含みます。

――木ノ葉を作った現実主義者、その功績と影

出典:岸本斉史『NARUTO―ナルト― 43』

千手扉間(せんじゅ・とびらま)は、初代火影・柱間の弟であり、「木ノ葉隠れの里」を制度として整えた政治家型の火影です。
冷静で厳格、時に冷たいと評されることもありますが、その行動には常に「里を長く安定させる」という明確な目的がありました。
彼は理想に酔わず、現実を見て動くタイプのリーダーです。

ただし、彼の政治には光と影がありました。
功績は大きい一方で、長い時間をかけて里に歪みを生んだ部分もあったのです。

柱間の理想を「現実」に変えた政治家

兄・柱間が「忍が争わない世界を作る」という夢を掲げたのに対し、扉間はそれを現実に機能させる仕組みづくりに尽力しました。
理想だけでは平和は続かないと考えた扉間は、「制度」で忍の世界を安定させようとしたのです。

「平和とは願うものではない。作り上げるものだ。」

柱間が理想を語る「創設者」なら、扉間はその理想を現実に落とし込む「建築家」でした。

扉間が作った制度と政治的功績

出典:岸本斉史『NARUTO―ナルト― 65』

扉間は、木ノ葉を単なる忍の村ではなく「国家」にするための制度を次々に導入しました。

制度目的現実での例え
忍者アカデミー教育を通じて忍の質を均一化義務教育制度
中忍試験他国との交流と外交の安定国際イベント(オリンピックなど)
警務部隊(うちは一族)治安維持と内部統制警察・公安
任務管理・報酬制度経済と軍事の安定化官僚制度
情報部(暗部)情報統制と諜報活動情報機関(CIAなど)

扉間は「強い個人」より「機能する組織」を重視しました。
これは現実でいえば、カリスマ政治家よりも行政官タイプのリーダーです。

うちは対策は差別ではなく「リスク管理」

出典:岸本斉史『NARUTO―ナルト― 65』

うちは一族を警務部隊に配属したことから、扉間は「うちはを差別していた」と誤解されることが多いですが、実際は違います。
彼はうちはの能力と性格を分析し、「外に敵を作るより、里の秩序を守る側に置く方が安定する」と考えました。
これは、潜在的な対立勢力を体制内に取り込む政治戦略。
排除ではなく、管理による安定を狙った現実的な判断でした。

ただし、この政策が後に「うちは一族の孤立」を生む結果となります。
扉間の政策は短期的には安定をもたらしましたが、長期的には不信と分断を深めてしまいました。

扉間の失敗①:うちは一族の孤立化

出典:岸本斉史『NARUTO―ナルト― 65』

うちはが警務部隊を担当したことで、
「監視役」「冷たい目で見られる存在」となり、他の住民との間に距離が生まれました。
次第に「自分たちは差別されている」という意識が強まり、
それが後の「うちはクーデター未遂事件」へとつながっていきます。

理屈では安定しても、心は置き去りになった。
これが扉間政治の最大の弱点でした。

扉間の失敗②:情報統制が生んだ“木ノ葉の闇”

扉間が作った暗部や情報統制の仕組みは、短期的には安全保障を高めました。
しかしそのシステムは、後に「木ノ葉の闇」と呼ばれる体制を生みます。
情報を一部の上層部が独占し、国民には見せないまま決定が下される。
結果として、ダンゾウのような人物が権力を握る温床になってしまいました。

つまり、扉間の作った“合理的な政治”は、後世では“冷たい政治”に変わっていったのです。

扉間の失敗③:感情を軽視した現実主義

出典:岸本斉史『NARUTO―ナルト― 43』

扉間は感情よりも理屈を優先するタイプでした。
しかし忍の世界は、血縁や復讐、愛や誇りといった「感情」で動く世界。
扉間の制度は、理屈では正しくても「人の心」にまでは届かなかったのです。

その結果、うちはサスケやナルトの時代にいたるまで、「憎しみの連鎖」は断ち切られませんでした。

扉間の政治思想をまとめると

観点功績失敗・副作用
政治制度木ノ葉を国家化した管理社会化・中央集権化
教育忍を均一に育てた感情と個性の抑制
うちは対策内乱を防いだ一族の孤立と不信
情報統制安全保障を強化闇の政治を生む結果に
思想理想より現実心の理解を欠いた

おわりに:扉間は「正しすぎた政治家」

扉間は理想を掲げた兄・柱間とは違い、「平和を続けるための現実」を重視しました。
その考え方は確かに正しかった。
しかし正しすぎたがゆえに、人の心を置き去りにしてしまったのです。

「平和は、仕組みで守るものだ。」

この信念は間違っていませんでした。
ただ、制度だけでは“人の痛み”までは救えなかった。
扉間の政治は、平和を「作る」ことには成功し、
平和を「感じる」ことには失敗したのかもしれません。

それでも、彼が築いた仕組みがあったからこそ、
ナルトたちは次の時代に「心でつながる平和」を目指すことができたのです。

千手扉間は、理想を夢では終わらせなかった現実主義の火影。
その功績も失敗も、木ノ葉の歴史そのものに深く刻まれています。

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