【皮から革へ】革の製造工程を徹底解説!栃木レザーの工場見学に行ってきた!【レザーソムリエ】

僕(ジェイ)は、2018年12月に晴れてレザーソムリエとなりました。

そして翌年、2019年6月21日にレザーソムリエの事務局より、栃木レザー工場見学へ招待されたので、参加することにしました。

工場見学で撮影した写真や聞いた話、もらった資料からタンニン鞣しの全行程を公開します!

掲載できる範囲で公開します!

 

なめしの工程を公開(栃木レザー工場見学)

日本最大のタンナー『栃木レザー』がこだわるタンニン鞣しの工程を

原皮の受け入れから出荷までご紹介します!

 

原皮の受け入れ

 

栃木レザーでは、基本的には牛と豚の皮を扱っています。

輸入時は腐敗を防ぐために塩漬けされています。

 

栃木レザーで扱う牛は大まかに2つの種類に分けられます。

  • 日本産(広島など)
  • 北米産(カナダなど)

 

日本の原皮は、和ヌキ/地生じなまと呼ばれています。

広島あたりの原皮を使っており、

特徴としては 皮が薄い/脂が多い/キメ細かい 扱いも少し難しいそうです。

 

北米の原皮は、主にカナダが原産です。

特徴としては 比較的力強く分厚い印象があります。

 

ではなぜ、同じ牛皮なのに硬さや決めの細かさが違うのか?

そもそも革は、食肉用の副産物として、本来捨てられるものを購入します。

牛革は100%食肉用の副産物です。

 

和牛は柔らかくてジューシーですよね。

なので原皮も肉質に合わせて”柔らかく脂がある”となるわけです。

一方、アメリカ産の牛肉は噛みごたえがある肉が多いので、原皮も硬く丈夫になるのです。

 

栃木レザーでは、厚く丈夫な皮が

しかし、最近では北欧産の原皮でも厚みのある皮が少なくなってきています。

その理由は色々あるのですが、BSEの輸入規制/育成年齢 などさまざまな要因があるとされています。

また、米国人も柔らかい肉を好むようになったという説もあるそうです。

 

水洗い・水戻し

輸入時に塩漬けされた塩分と、原皮についている汚れを落とすために、

巨大なドラムで24時間水洗いして、翌朝取り出します。

 

ドラム内には突起がいくつもあり、叩き洗いされます。

水洗いの後は、皮も柔らかくなります。

 

この時点では皮に毛が残った状態で、

重さは約50kg+水分なのでとても重たい、職人は2人がかりで背割りの台まで運びます。

背割り

ステアレザーの原皮は、面積約2.5m四方になります。

このままでは重たくて大きく扱いにくいので、水洗い直後に2分割します。

 

 

水分を含んだ重たい皮を、職人2人がかりで背割りの台に乗せます。

ドラム洗で表裏・前後がメチャクチャな皮の向きを一瞬で見極め、

頭を手前にして台に乗せます。

 

石灰漬け・脱毛

まず毛を縮ませる薬品に漬けます。

次に石灰が入ったピット槽に漬けます。

石灰は強アルカリ性なので、皮の繊維が膨張して毛穴も膨らみます。

毛穴が膨らむと、縮んだ毛が抜るという工程です。

 

多くのタンナーは、ドラムに石灰などの薬品を入れて、半自動的に脱毛します。

栃木レザーではあえて、濃度の違うピット槽を5つに分けて、5日かけて毛を抜きます。

手間のかかる工程を踏んでいます。

 

フレッシング

 

フレッシングとは、皮の肉面に残った脂肪や皮下組織を除去する作業。

脱毛が終わった皮をローラーにかける単純な作業ですが、

重たい皮をローラーに掛けるのは大変危険な作業でもあります。

 

ローラーをかけた後は、薄い皮と厚い皮を大まかに分け、後の作業をしやすいようにもします。

 

 

そぎ取った脂肪分も捨てることはありません。

栃木レザーでは余分な薬品を使わないので、通常捨てるような脂肪分でも、

化粧品や石鹸などに利用できるほどの品質だそうです。

 

脱炭・酵解

脱毛のために漬けられた石灰を取り除く工程です。

石灰のアルカリ性を中和することで、次の工程『ベジタブルタンニン鞣し』がスムーズに行われます。

 

 

上の写真は石灰を抜いた皮に紐をつけている様子です。

 

植物タンニン鞣なめし

皮にタンニン成分を染み込ませる工程です。

濃度の違う層が複数あり、だんだん濃い方のピット層に移していきます。

『何日漬ければ次へ』と機械的に移動させるのではなく、職人が実際に革の状態を見て次のピット層に移しています。

鞣し工程がすべて終わるのは、約1ヶ月だそうです。

 

というのも、気温やphなどは日々一定ではありません。

特に冬は水温が低くなるので、蒸気で加熱するそうです。

 

上の動画はタンニンが浸透しやすくなるように上下に皮を動かしている様子です。

 

栃木レザーでは通常ミモザを鞣しに使用しており、この色が革の色となるのです。

ただし、一部強度や品質の基準が高いオーダー品に関しては、

別に高濃度のタンニン槽を用意し、ケブラテョなどを鞣しに使用するそうです。

 

水絞り

 

鞣し終わった革には、水分が多く含まれており、そのままでは腐敗してしまいます。

軽く水洗いした後に、サミングマシンと呼ばれる専用の機械で余分な水分を取り除きます。

 

加脂

水分を抜いた革は、固くて加工がしにくいです。

革に耐久性や柔軟性を与えるために、脂を加えます。

 

魚油(たらの脂)と革をドラムに20分入れて回し、さらにもう一度脂を足し20分回します。

セッター

湿った革を伸ばす工程です。

原皮は部位によって厚みが違うので、その厚みを均等にしています。

革を伸ばすことで製品として使える部分が増えます。

 

乾燥(仮干し)

 

ここで10日間自然乾燥させます。

この工程で、一部の革は”素揚げヌメ革”として製品になります。

 

革漉き(かわすき)

 

革を製品の厚みに整える工程です。

上の写真は革漉き用の機械です。

ベルトや鞄、財布、ソファなどそれぞれにあった厚みに調整していきます。

 

その後、別の職人が革の状態(傷やシミ)を見て、それぞれの製品にあった革を選り分けていきます。

 

再鞣し・染色

鞄用、靴用、衣類用、財布用などの用途別に革の柔らかさや用途を調整したり、染色する工程です。

鞣し剤や染料をドラムに入れて馴染ませます。

 

薄手の革(1mm程度)なら一度に50枚ほど、厚手の革(5mm程度)は20枚以下で染色します。

かかる時間は薄手なら数時間、厚い革なら丸一日かかることも…

染色の時間はレシピとして設定されていますが、ドラムを止めて逐一チェックしています。

 

再セッター

染色によって水分を含んだ革を、再び絞ります。

ドラムを使ったので、シワも多く縮みもあるため、厚みを均一に伸ばしていきます。

 

ハンドセッター

栃木レザー ハンドセッター

 

厚手の革など、一部の革には伸びにくいものがあります。

伸びにくい革は、職人が革の繊維に沿ってハンドセッター(手伸ばし)します。

 

ハンドセッターで使うのは『ハガネ』と呼ばれる工具。

 

写真で見て変わるように工具には凹凸があり、高速で回転。

工具の重さと溝と回転で革のシワを伸ばしていきます。

重量もズシリと重く、素人が使うと飛んでいくくらい扱いが難しい工具です。

 

乾燥

この段階では、革はまだ水分を含んでいるので乾燥させる必要があります。

薄手の革は4日ほど、厚手なら1週間ほど

気温や湿度・季節によっては、さらに長い時間をかけて乾燥させます。

 

バイブレーション

乾燥で固くなった革を、小刻みな振動でほぐします。

注文に沿って柔らかさを調整していきます。

 

塗装

 

革に色を付けると共に、耐久性を高める工程。

栃木レザーでは機械的な塗装ではなく、スプレーガンで丁寧に色付けしています。

 

アイロン・仕上げ

最終的な仕上げの工程です。

バイブレーションなどの工程でついた跡や、塗装後に乾燥させて丸まった革を引き伸ばしていきます。

また注文に応じて、光沢感などを調整していきます。

 

仕上げにはいくつか種類があるのでご紹介します。

スルーアイロン

スルーアイロンという機械で熱をかけながら引き伸ばしてきます。

この工程で製品となる革もありますが、大抵は次に紹介する”ハイドリックアイロン”で最終仕上げとなります。

 

ハイドリックアイロン

多くの製品はこの工程が最終仕上げになります。

スルーアイロンよりも高温の80℃でプレス。

革を伸ばしつつ、光沢感も与えます。

 

グレージング

ガラスで強い圧力をかけて擦ります。

革内部の油分が表面に出てくるので、ワイルドで風合いのある表情になります。

バイカー系の無骨なアイテムに多く使われる仕上げ方法です。

 

検品・計量

革の値段は重さや厚みではなく、面積で決まります。

単位はデシ(10cm×10cm)で販売され、光電式の計測器で測られます。

 

包装・出荷

1枚の革を2人がかりで丁寧に包装していきます。

最後の工程で傷がついては出荷できなくなるので、非常に気を使う作業です。

 

以上が世界で愛される栃木レザーのタンニン鞣しの全行程です。

栃木レザーのこだわり

栃木レザーでは、皮を鞣すにあたってこだわっていることがあります。

 

水のこだわり

栃木レザーでは地下水が多く使われています。

地下水を利用する理由としては、

  • 大量に使える
  • 品質が安定している
  • 温度管理が容易

 

皮をなめす工程では、水は大きな要素のひとつなので、水にはこだわっています。

環境への配慮

皮を鞣す工程では、水が大量に必要です。

たった1日で900トンの水を使用し、排水の量も膨大に…

排水の中には環境に良くないものも含まれています。

 

栃木レザーでは、大規模な浄水設備を用意。

化学的な薬品は使わずに、バクテリアや微生物によって徐々に環境に影響のない状態にしていきます。

浄化された水の3分の1は原皮洗いに再利用され、それ以外は近くの川へ流されます。

まとめ 栃木レザーの

栃木レザー 玄関

 

皮から革へ

その工程はとても手間と時間がかかります。

今回は栃木レザーの鞣し工程を紹介しましたが、

他のタンナーさんもとても手間を掛けていることでしょう。

 

革は機械的・化学的に作ることができないので、普段見る革製品にも感謝の気持ち湧いてきますね。

特に、栃木レザーは昔ながらの製法で、薬品や化学物質に頼らないオーガニックな革を作り続けています。

優しい風合いの革は、世界の革好きから愛される皮革です。

 

ちなみに今回の栃木レザー工場見学は、レザーソムリエ事務局が主催で行われました。

ここでは書けない(多分書いちゃいけない)こともチラホラ聞けたり聞けなかったり…

年に一回、工場見学会はあるそうなので、今年行けなくても来年・再来年いけます。

もちろん2回参加してもいいそうです。(内容は変わりませんが…)

興味のある方はぜひレザーソムリエの資格試験にチャレンジしてみてください。

 

レザーソムリエについてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。

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